舞台「パレード」を観てきた

舞台「パレード」みてきた。これはすごい。

ミュージカルの持つ「陶酔させる」+「登場人物の内面にある感情を何倍にも増幅させて示す」という特徴が、本作のテーマである「差別と扇動」「冤罪と群集心理」にかけ合わさると、これほど批評性の高い舞台作品になるのかと驚いた。

特に1幕後半の裁判シーン、嘘の証言に煽られ容疑者叩きが「祭り」(=パレード)化していくシーンは圧巻。生オケで、曲もテンポも演者の技術も高い優れたミュージカル(舞台上の群衆と一緒に「気持ちよく」陶酔し熱狂したい欲望が嫌でも駆り立てられる、そんな水準)で、だからこそ舞台上で起きていることの「気持ち悪さ」が際立ち、重く鋭く観客に問いかけてくるという構造。

大量の紙吹雪を舞台に積もらせた「見立て」の巧さ、回り舞台、くっきりとした陰影・色を駆使した照明など、物語や登場人物の心理を視角で表現する森新太郎さんの演出も効果的。森新太郎さんは本作初演がミュージカル初演出だったと知り、これは評判になるわけだ、となんだか納得してしまった。

個人的には、高水準のストレートプレイを作ってきた人が、ミュージカルを少し引いて(メタにみながら)演出する、その良さが今作の内容とよくマッチしていた気がした。

ミュージカルの技術はむちゃくちゃ高いし楽曲も素晴らしい。にもかかわらず、ミュージカルの表現形式それ自体がテーマの核となる「悪」をはらんでいるという批評性。それに酔いしれる観客=冤罪祭りに加担する群衆と同じになってしまうというメタ構造。そういう、観客に鋭く突き付けてくる感じが、これぞ演劇という気がして、とても好きだった。

20世紀初頭の南北戦争直後のアメリカ南部で起きた北部出身ユダヤ人冤罪事件という史実としても見ごたえがあるし、「正義」の名のもとで「祭り」に嵩じたがる現代の私たちへの問いかけとしても普遍性を持つ作品。

ミュージカルファンでもストプレファンでも必見と思う。ここのところ、観劇から心が離れていたのだが、久々に大満足の観劇体験で劇場の魅力を思い出した。ひとり気持ちが盛り上がって、会場でもらったチラシ束から気になった作品をいくつかチケット予約してしまった。