舞台「パレード」を観てきた

舞台「パレード」みてきた。これはすごい。 ミュージカルの持つ「陶酔させる」+「登場人物の内面にある感情を何倍にも増幅させて示す」という特徴が、本作のテーマである「差別と扇動」「冤罪と群集心理」にかけ合わさると、これほど批評性の高い舞台作品に…

A.B.C-Z映画「オレたち応援屋」をみてきた

A.B.C-Z主演映画「オレたち応援屋」を観てきた。 総合的には良かったと思うけど絶賛ではない。ネタバレあります。 1. 良かったところ 1) ストーリーが普通に面白い。謎を残してあるので、最後まで「どうなるのかな」と見続けられる。 2) 離島の人口減少と地…

野田秀樹「赤鬼」について――見えないものへの「精神の暴発」

「コロナ禍」のもと、劇場に行けない「新しい日常」が突然やってきて、今もその日常が続いている。 3月頃に劇場がその扉を閉め始めた頃、ほんの数か月もすればこの騒動は終わって元に戻るだろうと、私はたかをくくっていた。だが騒動は終わらず、「感染者」…

失われた鰻重を求めて―三谷幸喜「大地 ソーシャルディスタンスver.」配信の感想など

私は鰻重が好きだ。絶滅が危惧されていて、私が生きている間に絶滅するだろうって言われている鰻。鰻重がなくなった世界を想像するだけで寂しい。 ここ最近の動向をみながら、鰻重と演劇って似てるな、と思った。「〇〇がなくたって死ぬわけじゃない」と意味…

「天国の本屋」(2020年1月よみうり大手町ホール)感想

天国の本屋、みてきた。原作の美点が何倍にも膨らまされた、まさに「ミュージカルの力」を体感できる舞台。朗読の劇中劇と本編のストーリーがシンクロする展開を、脇を固める俳優陣の高い技術がテンポよく過不足なく成立させ、ストレートなラブストーリーパ…

A.B.C-Zとふぉ〜ゆ〜について

舞台ファンで、なんでも節操なく観る。ジャニーズでは、A.B.C-Zとふぉ〜ゆ〜を推している。好きになったここ数年、互いの舞台作品を比較しながら観ることも多いのだけれど、共通点(バックダンサー歴長い実力派、シアターダンスも外部芝居もバラエティもでき…

阿呆浪士(新国立劇場、2020年1月)感想

ネタバレあります。 1. 全体について―総合的にGOOD 面白かった。赤穂浪士の血判状が阿呆に拾われて、 ドタバタのなりゆきで阿呆も浪士として出陣することに、 ってストーリーがまず興味をひくし、阿呆の周囲の人間模様、 赤穂側の虚実入り混じった人間模様が…

本谷有希子作・演出「本当の旅」

本谷有希子作演出「本当の旅」原宿VACANT、観てきた。これは面白いわ…。終わった後ちょっと立ち上がれない程の衝撃があった。 時流を鋭く刺す、あまりにもエッジの効いた本谷テキストと、多彩な表現技術を売りとする複数の劇団から集められたキャスト陣との…

ラッパ屋「2.8次元」―演劇酔狂の、演劇酔狂による、演劇酔狂のための作品

演劇好きの中でも観巧者たちからの評判が高い「2.8次元」。観てきた。 笑ったー!ミュージカル、2.5次元、新劇、それぞれの「あるあるネタ」や「いかにもネタ」で笑わせつつ、しかし貶めず、異分子どうしの心情や行動原理をきちんと描き、少しの苦味もむしろ…

KERA・MAP「キネマと恋人」―虚構と虚構に支えられながら生きる者たちへの賛歌

観てきた。2016年初演の際には観劇のご縁がなく、今回も半ばあきらめかけていたところにチケットを入手することができて向かった北九州芸術劇場。観劇できたことが恩寵に思えるほどに素晴らしかった。 幕引き後、心の底から夢中で拍手した。昔、生まれて初め…

BACKBEAT感想―「熱狂」の波が寄せる、海辺での別れと永遠の喪失について

BACKBEATみてきた。最高だった。 観劇前の数週間、仕事のことで頭いっぱいで寝ても覚めても仕事のことが頭を離れなくて困ったもんだなと思っていたのだけれど、BACKBEATの1幕冒頭で出演者が軽くダンスするシーンであまりのかっこよさ(男くささと色気)に頭…

「良い子はみんなご褒美がもらえる」考

みてきた。とても難解。役者は健闘していました。堤さんも橋本くんもきれい。きれいにまとまりすぎたかもしれない。 「難しかったなぁ」で終わりたくない性質なので、ほぼまっさらな状態で観劇した私はこんな風に解釈した、というのを記録しておく。ネタバレ…

「トリッパー遊園地」感想―いち演劇ファンの視点から

「トリッパー遊園地」をみてきた。正直いうと、演劇としてあんまり期待はしてなかったんです(ごめんなさい)。でも、思いのほか良作でびっくりしたんで、どこが良かったか書いておきたい。(ネタバレはしてないつもり) 1 脚本・演出の良さについて みる前…

「Le Pere 父」感想

記録しておこうと思ったのに忘れていた「Le Pere」の感想。今更だけど書く。 評判通り素晴らしかった。配役・セットの変化、リフレインを巧みに使って、認知機能に狂いを持つ主人公が体験する日々の世界の混乱と滑稽さを、観客に直接体験させる仕掛けは演劇…

観劇記録「ゲゲゲの先生」

「ゲゲゲの先生」面白かった。水木作品のドライで少しとぼけた空気感が舞台上に立ち上がっていて、役者がいずれもハマり役。中でも、佐々木蔵之介さん、舞台での演技を初めて拝見したけれど、主役の半妖半人・根津の深刻ぶらないけれど決して拭えない悲哀の…

「ナイツ・テイル」感想――いち演劇ファンの視点から

ナイツ・テイルの感想、ツイッターだけだと流れていっちゃうのでこちらに記録。 演出について――精緻かつ大胆な空間使いと「見立て」の演劇的興奮 大変に面白かった!ジョン・ケアードの大胆だけどさりげない演出、特に回り舞台(盆)の使い方の巧さに唸らされ…